『労働者の募集/採用に関して、年齢で制限するのはNG』
すっかり定着しつつあるこのルールですが、最近、人事担当や採用担当になった方だと、
「自分の頃は、普通に30歳までとか年齢で制限してたけどな・・・」
と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
ということで、今回の「今さら聞けない人事/採用の常識」は、
「なぜ年齢制限はNGなのか?」です。
■はじまりは2007年
2007年(平成19年)10月に雇用対策禁止法が改正され、
事業者に対して労働者の募集/採用においての年齢制限の禁止が義務化されました。
なので、このルールがスタートしてからちょうど10年が経過したことになります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/topics/tp070831-1.html
■法改正の意図
では、この法改正の意図がどこにあるのか。
上記のページに設置されている
「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」事業主の皆様へ 」
というpdfのドキュメントから以下に抜粋します。
●年齢制限禁止の義務化は、個々人の能力、適性を判断して募集・採用して
いただくことで、一人ひとりにより均等な働く機会が与えられるようにす
ることを目的としています。●少子高齢化のなかで、我が国経済の持続的な成長のためには、個々人が年
齢ではなくその能力や適性に応じて活躍の場を得られることが重要です。
またこうも書かれています。
形式的に求人票を「年齢不問」とすれば良いということではありません。
年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定
することは法違反になります。また、応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変えることもできません。
砕いて言えば
「少子高齢化で労働者の年齢もあがっていく中、今までみたいに年齢を基準とした
採用を企業が行い続けると、いろいろ問題起きそうだからやめてね」
ということでしょうか。
少子高齢化という言葉が使われていることを考えると年齢制限の撤廃といいながら、
本丸はは上限の撤廃だったのかなぁと感じます。
「男性だから採用する」「女性だから採用しない」「この出身地だから採用しない」
「この国籍だから採用しない」「この思想だから採用しない」といった、
様々な就職差別と同じように「この年齢だから採用しない」という
就職における「年齢差別」をなくすことが目的といえば分かりやすいかもしれません。
■例外事由について
原則的にはあらゆる雇用形態、業種、職種において、
年齢制限は一切、禁止されていますが、世にある求人メディアを見ればわかるように、
いくつかの例外のもと、年齢制限を行うことが許されています。
上記の資料から今一度、抜粋します。
年齢制限してもいい例外事由は1号から3号まであり、
3号にはイからニまで4つに分かれているため、合計6種類の事由が許されています。
この中で、一般的にあるのが「例外事由 2号」と「例外事由 3号 イ」でしょうか。
前者は、「22時以降は18歳以上」など労働基準法がらみや
「18歳以上(警備業法)」といった警備業法がらみがほとんどだと思います。
で、後者つまり「例外事由 3号 イ」に関しては、
「雇用期間に定めのない」つまりは一般的に正社員として雇用のもと、
若年者を長期の勤続を前提に育てたいなら年齢の上限を設定してOKだよというルールです。
わりと法律上の文言が抽象的なので、求人メディアなどでは、
それぞれに独自の表記ルールを設けて対応しているのでお気をつけください。
■おわりに
この法改正が行われた時は、「就職における年齢差別をなくす」という法改正の目的は
理解しつつも、いわゆるメンバーシップ型雇用の考え方が根強い日本においては
組織の新陳代謝という発想になりやすく、その中でどこまで浸透するかと半信半疑でした。
というか、それまでは私たちも当たり前にやっていたことでしたし。
実務上は、あらゆる広告から「年齢制限」を外したり、
クライアントにご理解をいただくのが大変だった記憶があります。
あれから10年。
この法改正によって社会はどこまで変わったのかと考えてみると、
あらゆる求人メディアで見かける「20代活躍中!」といった表記に、
年齢制限の名残を感じつつも、以下のようなニュースを見かける機会も多くなっています。
転職者300万人回復 昨年、中高年中心に7年ぶり 40代に即戦力需要
引用元 日経新聞 2017/2/18
転職者数に占める35歳以下の若年層の割合はこの10年で低下が続く一方で、大きく存在感を増しているのが中年層だ。
実際、16年調査をみると45~54歳の転職者数は50万人と、統計を遡れる02年以降では最多を記録した。実際の人数ではまだ25~34歳(77万人)をはじめ若い年齢層を下回るものの、3年で10万人増えており増加テンポが速まっている。
法改正の影響なのか、企業が少子高齢化と労働者の年齢の向上に
対応していたただけなのか分かりませんが、少しづつ変化は起きているようです。
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