マネジメント研修とかやる余裕ないなら、とりあえずこの一冊を教科書に「HIGT OUTPUT MANAGEMENT」。

最近、研修に関する営業電話、特にマネジメント研修に関わる営業電話をいただくことが多くなってきました。リーマンショックの後、どの業界でも採用を絞った結果として、中間層がプレイヤーとしてそのまま持ち上がりマネジメント経験を積む機会がなく、結果、マネジメントできる人材が不足しているという話は、数年前、よく耳にしましたが、それが理由かもしれません。


一方で、働く人材やワークスタイルが多様化していく中、専門的なマネジメントスキルの重要性は高まり続けていくことは間違いありません。じゃあ、研修でもやろうかという話になると思うのですが、ある程度、規模がある企業ならともかく、そこまで余裕がないという企業も少なくないと思います。そんな時に、とりあえずの教科書代わりとしておすすめしたいのが、今回の人事の代わりに読みましたで取り上げる「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」です。


オススメ度:★★★★☆


マネジメントを学ぶという側面なら星5つなのですが、人事にオススメするという建てつけなので、4つとさせていただきました。


著者は当時インテルのCEOだったアンドリュー・S・グローブ。その経験を活かして本書を書いたのが1983年(日本語版は翌1984年に発行)。それに1995年に追加・加筆したバージョンを基に2015年に米国で発行されたペーパーブック版を翻訳したのが本書ということです。もとは30年以上前の本ですが、今、読んでもまったくもって新鮮な内容です。


まず本書は、


マネジャーのアウトプットとは、その直後の監督下にあったり、または影響下にある組織体のアウトプットである。

日経BP社 「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」 P30より


とマネージャーの成果をズバッと定義します。そしてその定義のもと、仕事の管理から人の管理、育成まで、マネジメントに関するあらゆる原則を示してくれます。一方で抽象的な理論に偏るのではなく、(当時)現役の経営者らしく実践でぶつかる矛盾した状況への対処や技術も紹介されています。理論と実践。その双方のバランスが優れています。


いくつか、抜粋してみると。


ミドルマネジャーの中には組織上の命令権限を持っていなくても、影響力を及ぼす人々が含まれる。それが「ノウハウ・マネジャー」。周囲の人々に対して知識と技能と理解の源泉となっている人々。彼等は組織の中でコンサルタントとして行動する一種のエキスパートである。

P25


「混沌をして君臨せしめよ、されど混沌の中で手綱をさばけ」

P28


生産プロセスの中で、できるかぎり「価値が最低」の段階で問題を発見すべき。

P53


真に有効なインディケーターは、アウトプットを測定するものであって、アクティビティだけをみるものではない

P59


先行指標は、ブラックボックスの内部をのぞく一つの方法。これにしたがって行動を起こす覚悟が必要

P63


マネージャーは、自分のテコ作用が最大となりそうな点に移るべき

P93


意思決定には2種類ある。ひとつは前向きの決定。もうひとつは大きくなりつつある問題や危機に対応する決定

P98


マネジャーには二つの基本的な役割があるので、2種類のミーティングが基本的にはある。一つはプロセス(知識の共有、情報交換)中心のミーティング。もう一つは、具体的な問題の解決であるミッションと呼ばれるミーティング

P127


日経BP社 「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」より


キリがないので、この辺りでやめておきますが、どの章も本当に勉強になるだけでなく、次の日から活かすことができるはず。


また今回、付け加えられた序文にもあるのですが、本書を通して著者の深い思考や洞察とともにポジティブな精神や人間への暖かい視線を感じることができるのも、本書の魅力だと思います。


一番売れている営業をマネージャーにすると、売れる営業が1人いなくなって無能なマネージャーが1人増えるとかいうけど、よく考えればそれしかないよね?といった(意訳)ポジティブな姿勢に勇気付けられます。


マネージャーになりたての方からベテランの方、そしてマネジメントを育成する立場の方にとっても、「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」 オススメです。