日本企業は体育会系を本当に求めているのか?

さて、本日、こんな記事が話題になっています。


日本企業は「体育会系」大好き、日本社会は「運動部カルト」 週刊プレイボーイ連載(339) 橘玲公式BLOG


部分的に抜粋すると


すこし前のことですが、ヘッドハンティングを仕事にしているひとの話を聞いたことがあります。新しい部署や事業部を任せられる幹部を、年収1000万円から3000万円で探すよう頼まれるのだといいます。


「いつも不思議に思うんですけど」と、ベテランのヘッドハンターはいいました。「大学の運動部出身というと、どこも大歓迎なんです。“えっ、この程度の実績でいいの”と思うようなひとでも、どんどん採用されていきます」
顧客の再就職が決まると、その年収に応じてヘッドハンターに報酬が支払われます。逆にいえば就活中はタダ働きになってしまいますから、できるだけ早く決めたいと思うのは人情でしょう。そこで日本企業から求人のオファーがあると、大学運動部出身者を優先的に斡旋するのだそうです。


という話です。年収1000万円~3000万円クラスの新事業の責任者の採用で、体育会系であることを重視するという話はHR業界の片隅に身を置くものとしては、正直、簡単に信じることはできません。一方で、これがただの新卒採用なら、まだ話はわかります。いわゆる日本の大企業で新入社員の半数以上が有名大学の運動部やサークルの部長やキャプテンやらで占められるというのは、よくある話です。


こういった「体育会系は企業に求められている」「体育会系は就活で有利である」という話は、よく聞きますし、個人的に見聞きした経験から言っても、なんとなくそういう傾向はあるかなという気もするのですが、それを裏付けるようなデータはこれまで見たことがない気がします。


ということで、「日本企業は体育会系を本当に求めているのか」がわかるデータを探してみました。


体育会学生の就職活動調査 DISCO

まずこちらのデータ。2016年8月古いですが、一般学生と体育会学生のデータを比較しています。で、内定率を比べると、


6 月中旬時点の内定率を比較した。体育会学生は 78.8%で、一般学生の内定率(76.0%)よりも 2.8ポイント高い。僅差ではあるが、体育会学生の方が内定を得ている割合が高いことが分かる。


と、それほど大きな差はないように見える。しかし。


6 月の調査時点で就職先を決定していた学生に決定企業の規模を尋ねたところ、体育会学生の 55.2%が「従業員数 5000 人以上」と回答し、一般学生(36.4%)より 18.8 ポイント高かった。また、上場企業の比率も体育会学生の方が高く、体育会学生が 81.2%だった一方で、一般学生は 60.6%だった。体育会学生は、大手上場企業に多く決定していることが分かる。


とあり、競争の激しい大手企業、上場企業の選考では体育会学生が有利に戦いを進めていることがわかります。


能力を武器に!就活成功の鍵は「効率化」と「集中力」-17卒体育会系学生就活実態調査(2016年7月実施アンケートより) Offer Box

こちらも似たような時期のデータ。


内定獲得状況については、全体の76.1%の体育会系学生が「既に1社以上の内定獲得」をしている。
(一般学生は1社以上獲得が全体の56.4%)
更に「内定を5社以上獲得している」体育会系学生は4.3%もいた。これは一般学生よりも多い。

こちらのデータでは一般学生と体育会系学生の間に大きな開きがあることがわかります。


で、一般学生と体育会系学生の就活に関して定量的に比較したデータって、これくらいしか見つけることができませんでした。ただ少なくとも「体育会系は企業に求められている」「体育会系は就活で有利である」という話は嘘じゃなさそうです。個人的な経験値でいうと「体育会系が欲しい」という企業は、ここ10年位で少しずつ減ってきているような気がします。


いずれにしても、もし自社の新卒採用において「体育会系」という要件があった場合、それは他企業と奪い合いを行うことを意味しているので、むしろなぜ「体育会系」なのかを考え、その背景にある要素を要件として設定した方が良さそうです。