状況面接+リーディングスキルテスト的な?自社の面接を少し工夫した話。

ヒトフレがはじまってから、何度か面接に関することを取り上げていました。例えば、構造化面接があってgoogleでは状況面接と行動面接を行っているとか、「採用学」には構造化面接と非構造化面接を比べると、将来的な業績予測との妥当性係数において大きな差があるとか、一番、妥当性係数が高いのは「ワークサンプル」であるという研究が紹介されていたとか。


そうすると自社の採用においても新しい採用手法を試したくなるものです。そんな時に、新しく営業事務スタッフを採用することとなり、少し選考方法を工夫してみたので、ちょっとご紹介したいと思います。


従来までの選考手法は、かなりオーソドックスで一次選考では面接と作文、2次選考は面接と適性試験という構成。一次選考の作文というのは何かというと、何らかのテーマについて800字程度の作文を書いてもらいます。求人広告も、文字による情報を扱う仕事なので「読むこと」「書くこと」が苦手だと少し厳しい。学歴は別にいらないけど基本的な国語力は欲しい。ということで行ってきました。これまでリーディングスキルテストをヒトフレで紹介してきたのは、同じ用途に使えるのではと個人的に考えたこともあります。


選考方法を新しくするにあたって、まず取り入れようと思ったのが「構造化面接」。これまで面接での質問事項を揃えていなかったわけではなかったのですが、今回、改めてしっかりリストにして、全面接者に同じ質問を行いました。次に「状況面接」。「状況面接」とは、「もし、▲▲のような状況になったらどうしますか?」と、あるシチュエーションを紹介して、それに答えてもらう手法です。


で、結局、作文をやめて、以下のような記述式の試験を実施しました。


※実際の問題文と設問です。ご笑覧ください。


■問題文
お昼を食べおえた締切日の午後13時30分。お客様から赤字の指示があった原稿の修正を行おうとしていたあなたに、先程まで電話対応をしていた新人の営業マンが困った顔で「あの・・・」と話しかけてきた。
たまたま出た定期的に取引のあるお客様からのお電話。担当の営業の○○君が不在であることを告げると、お客様は用件を切り出してきたという。

「今、WEB上に掲載中の弊社の求人広告だが、勤務地の表記に間違いがある。現在は渋谷と広告には書いてあるが、正しくは鎌倉だ。○○君には口頭で伝えたはずだったが、修正されていない。確かに最終確認をしなかった私も悪かったが、、、。起こったことは仕方ないから、○○君に連絡を取っていち早く修正してほしい」

「って、言われたんですけど、どーすればいいですか?」先週入社したばかりの新人営業マンは、泣きそうな顔だ。すぐにグループウェアで、担当営業の○○君のスケジュールを確認すると、ちょうどアポにはいったばかりで携帯で捕まえられるのは約1時間後だ。

掲載中の広告の修正は可能だ。しかし、気軽に行えるものではなく本来であれば担当営業が責任者である営業部長に経緯を説明し了承を受けた上で、専用の申請書を記入の上、部長の捺印をもらい、広告の版元に申請する必要がある。

また修正のタイミングは一日に3回と決められており、16時の修正タイミングを逃すと、次は翌日の朝になってしまう。お客様はその事情を知っているから焦っていることが伺える。そして16時の修正に間に合わせるには、14時までに申請書を提出する必要がある。申請書自体は、以前、営業の代わりに書いたことがあるので、10分もあれば記入することが可能だ。

ただ上長である営業アシスタントのリーダーは、今日に限って有給でお休み。体育会系で恐れられている営業部長は社内にいるものの社長を交えて各事業部の責任者が出席する幹部会議の真っ最中。会議の終了時刻は14時とホワイトボードには書いてある。

さらに冒頭で説明したように、あなたは締切が迫る原稿の修正対応を行う必要がある。オフィスを見回すと、社内にいるのは同期で入社したもう一名の営業アシスタントと○○君とは別チームの営業が一名。営業部長のデスクに目をやると無造作に印鑑が転がっていた。



■設問1 あなたなら、どうしますか?



■設問2 その行動を選んだ理由を教えてください。


このような形式にしたのは口頭で可能な「状況」の説明だと、どうしても限定的な説明になってしまい、画一的な答えばかりになりそうだったこと。また文章を読んでもらい、記述式で答えてもらうことで、基本的な国語力を計れると思ったからです。そのため時間などに関して、まどろっこしく説明を行うことにしました。


この試験そのもので見たかったのは判断基準と行動基準です。


・自分の仕事ではないからと、他の人にまわす

・勝手に部長の印鑑を押して申請を進める

・幹部会議中の部長を呼び出し、事情説明して対処する

・直近の修正はあきらめ、幹部会議の終了を待つ

・担当営業の携帯を鳴らし続け、なんとしても捕まえる


などなど、様々な選択肢がありますが、いずれも何らかのリスクやデメリットがあります。その上で、「正解の行動があるわけではないので、あなたならどうするか、答えてください」とお伝えしました。


基本的に中途採用だったので、どのような判断基準、行動基準が求められるところで経験を積んできたのかを見たかったのです。例えば、社内的な規律が厳しい企業であれば、現場での柔軟すぎる対応は喜ばれないかもしれません。幹部会議中に呼び出すなんて、もっての他かもしれません。また、どこまで自分の業務の影響範囲や前後が見えているかも見たかった点です。この件を自分で対応するにしても、冒頭で触れられている自分のタスクは、どう処理するのか。あやまった求人広告が掲載されている場合、どのような事(クライアントだけでなく、求職者に対しても不利益になる)が起こるのかまで想定できるか。などなど。


ただ一方で選考手法としては初めてのものとなり、その効果や有用性も見えづらいので実際の選考においては参考程度にとどめました。このお手製の問題文がどこまで適切なのかも自信もなかったのも正直なところです。


10人を超える方に回答をいただきましたが、思いの外、問題文の内容が伝わっていてホッとしました。また回答もバラエティ豊かで、同じ回答という方は1人もいなかったと思います。二次選考に進んでいただいた方には、その回答内容をもとにお話させていただきました。結果的には、試してみてよかったと思います。次は、またもう少し改良して新しい方法にチャレンジしていきたいと思っています。


少しでも参考になれば幸いです。